SAS担当になったら② ~SAS(睡眠時無呼吸症候群)対策の3ステップ~【全6回】

このページでは、運輸業のSAS担当者向けにSASの概要について分かりやすくお伝えしています。実際に体に何が起こって、どのような症状が出て、なぜ運輸業に対策が求められているのか等をお伝えいたします。

SAS対策で必要な 3つのステップ

企業で実施するSAS対策は、大きく以下の3ステップに分かれます。

  • 検査機関に依頼し全ドライバーが自宅で実施するSASスクリーニング検査
  • SASスクリーニング検査で「要精密検査」となった方に専門医療機関で実施するSAS精密検査
  • SAS精密検査で「治療が必要」と診断がついた方に専門医療機関で実施するSAS治療

ここからは、各ステップに分けて解説を進めます。

ステップ1 SASスクリーニング検査

SASスクリーニング検査は簡易検査と呼ばれることもあり、一番初めに実施する検査になります。基本的には運転者全員が実施します。金銭的負担を抑えながら、日数をかけずに簡単に全運転者のリスクを把握できることが長所です。この検査によって、「追加の精密検査が不要なのか必要なのかが」判明します。

初めてスクリーニング検査をする運送業の場合、以下の手順で注文をします。

  1. 検査業者と打ち合わせをし、運用方針を決める
  2. 希望時期・発送先事業所・事業所別の概算の検査人数を伝える
  3. 検査業者から希望日での実施可否の連絡を受ける
  4. 実施可の場合、検査実施者のリストを検査事業者に送る
  5. 希望日に検査業者から事業所へ実施者が指定されている機器が届く(※検査業者により、機器台数が実施者より少ない場合があります)
  6. 事業所に機器が届いたら、検査実施者に機器を配布
  7. 検査実施者は自宅で機器を装着し就寝
  8. 決められた日まで(5~2週間ほど、検査業者により異なります)に検査実施者から検査機器を回収し、事業所で台数を確認し返送(※検査機器は高額であるため回収漏れには充分に注意する)
  9. 返却後、おおむね1~2か月ほどで個人の結果票が事業所に送付される。同時に検査結果一覧を検査業者から会社ご担当者様に送付される
  10. 検査結果一覧をもとに、精密検査が必要な方へ通院を促す
2種類のスクリーニング検査機器

結果票の形式やその判定方法は検査業者によっても異なりますが、恣意的な絞り込みを行わず全員に検査を実施した場合、10%前後の方が「要精密検査」との判定になる傾向にあります。

この要精密検査の方が、次のステップ「SAS精密検査」において医療機関で精密検査を受ける必要性があると判定された方になります。ここまでが「SASスクリーニング検査」のステップです。

また検査頻度について、加齢や体重増により新たにSASを発症することがあるため、国土交通省はSASスクリーニング検査を、おおむね3年~5年に1回は全ドライバーに実施することを推奨しています。

ステップ2 SAS精密検査

スクリーニング検査で「要精密検査(病院でより正確な検査を受けてください)」との判定が出た方は、専門医療機関で精密検査を受ける必要があります。

いわゆる検査入院にあたるもので、専門医療機関ではビジネスホテルのような個室が与えられることもあります。医療機関では、脳波計や心拍計などを装着し就寝します。

多くの場合、夕方に医療機関に入り、機器を付けて就寝し、翌朝には退院することもあります。そのため、有給休暇を取得し検査をすることもありますが、一方で有給休暇を取得せず、仕事帰りに寄って検査、そのまま出社するという会社様もあります。

検査結果が出るまで数日必要となるため、後日、検査結果を聞くために受診します。この時に治療が必要との診断を受けた場合、次のSAS治療のステップへとすすみます。

ここまでが医療機関で実施することですが、運送業ではその前に、どうしたら従業員が精密検査を受診してくれるか?という課題があります。専門医療機関のリストアップから始まり、従業員へ受診勧奨(病院に行くように説得)し、会社で費用負担するかを決める必要があります。

対応は会社によって異なり、そもそも雇用契約上SAS検査・治療を受けないと運転の継続を認めないと明記している会社や、スクリーニング検査までは会社負担で行っているが、そこから先は個人の自由意志としている会社もあります。

事故リスクを下げるという意味ではSAS治療まで実施しないと効果がありません。会社によりご事情は異なりますが、SAS治療まで会社で管理し実施されることを推奨しています。

SAS対策の運用事例も配布しておりますので、必要に応じてご利用ください。

ステップ3 SAS治療

SASの治療方には外科的手術、生活改善、マウスピース治療などいくつかありますが、代表的なのはCPAP(シーパップ)という治療機器を処方し、患者はCPAPを装着して就寝する、というものになります。CPAP治療は即効性・有効性に優れており、多くの場合SAS治療の第一選択肢となります。

このCPAPが処方されたら、月に一度の受診が必要となります。使用が安定すれば最長で3か月に1度になることもありますが、医師の判断により異なります。このCPAPが安定して装着できていれば、問題なく運転が可能であると言われています。(※医師の判断により異なることがあります。)

この治療の段階で会社が注意することは、「CPAP(もしくは他の治療)を開始したか」「CPAP治療を継続しているか」「症状の改善がみられるか」の3点になります。

精密検査後治療を開始したかを確認するケースは多いのですが、その後使用を続けているかの確認が漏れていることがあります。後で確認すると、通院が大変で治療をやめていた、引っ越しにより転院するのが億劫でやめていた、ということがあります。事故リスクを下げるため、CPAP治療を進めていることまで確認することを推奨しております。その際に、眠気といった症状が改善しているかも本人にご確認ください。産業保健師がいらっしゃる場合、産業保健師が毎月面談している事例もあります。

CPAP治療

以上が、法人で実施するSAS(睡眠時無呼吸症候群)対策の3STEPとなります。次回の第3回は、過去からの国土交通省の対応の説明を行います。ぜひ併せてご覧ください。

上記についての詳細なご説明や検査のご検討など、個別のご事情に応じた無料相談をお受けしています。以下からお問い合わせいただければ、後日担当者から回答させていただきます。

<同じシリーズのその他記事>

SAS担当になったら① ~SAS(睡眠時無呼吸症候群)についての解説~

SAS担当になったら③ ~国交省と運輸業の睡眠時無呼吸症候群対策~

SAS担当になったら④ ~SAS対策においてのよくある課題~

SAS担当になったら⑤ ~SAS対策の費用と助成金~