SAS担当になったら③~国交省と運輸業の睡眠時無呼吸症候群対策~【全6回】

“SAS担当になったら”シリーズでは、 運輸業のSAS管理担当者になられた方向けに、SASの概要を分かりやすく解説しています。これまで国土交通省がどのような公表物を発表し、運輸業に何を求めているかを解説します。

国交省「SAS対策マニュアル」のサマリー

国交省のSAS対策マニュアル、といえば、「自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル~SAS対策の必要性と活用~」を指すことが多く、また多くの企業がこれを参考に自社のルール整備を行っています。比較的長い資料となりますので、こちらのサマリーをご覧いただくとともに、実際にルール整備を行う際はマニュアルの原点をご覧ください。

SAS対策マニュアルの章立て

  1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策の必要性
    1. SASとは?
    2. SASの症状
    3. SASと交通事故
    4. SASと疾病との関連性
    5. SASと生活習慣
    6. SASへの対応における事業者・管理者の役割
  2. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニング検査の進め方と活用
    1. SASスクリーニング検査とは?
    2. SASスクリーニング検査受診までの準備
    3. SASスクリーニング検査の進め方
    4. 専門医療機関のかかり方
    5. 運用管理を踏まえた社内での取扱
    6. その他良質な睡眠を確保するための情報
  3. (目次外)睡眠時無呼吸症候群(SAS)取扱規定の様式(サンプル)

SAS対策マニュアルの内容

上記の章立てのとおり、SAS対策マニュアルには周辺知識~対策の仕方まで、幅広く内容が掲載されています。一方、全部で表紙やサンプルをいれても18Pと分量が多くないため、網羅的な把握は行いやすいものの、例えば

管理者にはこのような運転者の意識を変え、職業
運転者としての自覚を促す強い熱意や指導力が求められます

この記載のように、具体的にどうしたらいいのか?と迷う記述で終わる箇所もあります。

国土交通省は強く推奨を続けており、2016年の衆議院でも更なる対応についての協議がなされていますが、現時点で法整備まで至っているものではありません。そのため、「こうしなくてはならない」とうい記述まで踏み込むことが難しいのだと考えられます。

第1章 睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策の必要性

以下、国交省の強調表示部分を引用して記載します。ここに国交省の考え方が見受けられます。病気そのものへの理解、事故リスクが高いこと、全体の約1割が中等度以上(治療が必要)、生活習慣との関連の記載があります。

日中の強い眠気や疲労等の自覚症状をともなう病態が睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)です。SASでは、運転中に突然意識を失うような睡眠に陥いることもあります。

必ずしも眠気を感じることがないという点に注意が必要です。

重度のSAS患者は、短期間に複数回の事故を引き起こすことが多い

日本の男性トラック運転者の約 7-10%注2)、女性の約3%注3)が中等度以
上の睡眠呼吸障害注4)であることが示されています

SASは生活習慣と大きく関連のある疾病

肥満はSASの発症・悪化に強く影響を及ぼします

アルコールの制限、禁煙や節煙などを心がけましょう

第1章 睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策の必要性 より

第2章 睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニング検査の進め方と活用

第2章では、より対策の方法にフォーカスした章になっています。検査の意味、全員を対象にすべき理由、頻度、病院での実施事項、その後の会社の対応の記載があります。また、末尾に規定のサンプルもあり、多くの会社が参考にしています。

SAS対策マニュアル内 SASスクリーニング検査の手順(例)

確定診断のための精密検査が必要かどうかを判断するために行う簡易な検査です

スタートに際しては、目的や会社の方針を示しましょう。

社内規定作成のポイント(別添資料)

本人の自覚症状による問診票だけで検査対象者を絞ってしまうと、重症のSAS患者を見過ごしてしまうリスクがあります

スクリーニング検査の基本は運転者全員を対象に実施することです

検査の頻度は3~5年に一度が目安です

中等度・重度の睡眠呼吸障害がある人においても強い眠気を感じる人が少ないことが示されています。したがって、眠気がなくてもスクリーニング検査機器による客観的な検査を受けることが重要です

スクリーニング検査の結果を踏まえて、SASの疑いのある人はなるべく早いタイ
ミングで精密検査を受ける必要があります。

精密検査の結果に基づき、SASの治療が行われます

有効性・即効性があり、ほとんど副作用はありません(CPAP治療について)

毎月の受診が必要(CPAP治療について)

乗務可否の判断目安や医師への意見聴取方法に関しては「事業用自動車の運転者の
健康管理マニュアル」に記載されておりますので合わせてご活用下さい。

職業運転者にとって良質な睡眠の確保は安全への生命線です

このように、かなりSASスクリーニング検査についての記述が厚くなっています。SASスクリーニング検査はSAS対策の入り口であり、まずはスクリーニング検査の実施企業を増やしていくことにフォーカスしていることが見受けられます。

ただし、前述のようにSAS対策は法令できめられたものではなく、また「こうすればいい」というものも公表されていません。会社ごとに自社の運用方針を決める必要があり、そこも実施に踏み切れない理由の一つとなってしまっている会社様もございます。

こちらでは、複数企業様の実際の運用をもとにした標準的なSAS対策の方法を無料でお渡ししています。以下のリンクからダウンロードしてお使いください。

国土交通省のSAS関連公表物の歴史

  • 【2003年】山陽新幹線オーバーランをきっかけに「SAS問題」へ国交省の対応方針を示す

出展:睡眠時無呼吸症候群(SAS)問題への対応について

・国土交通省として対策に取り組んでいくことを表明

山陽新幹線の居眠り運転を契機に、” 鉄道のみならず、陸・海・空の各交通機関に共通する問題であり、安全な交通サービスを安心して国民が享受する上からも一日も早い対策が急がれている。 ”交通事業関係者への周知と指導の徹底を図る。”とし、今後対策に取り組んでいくことを表明しました。

・乗務員にいたずらに不利益な措置としないことにも言及

加えて、”その際、SAS問題対策として、乗務資格の喪失等の措置をとらざるを得ない場合は別として、「SASであると診断」された者に対し、不利益な措置とならないよう十分留意する。”とも記載し、雇用についても言及しています。

【2003年】企業のSAS対応のマニュアルを示す(2007年改訂)

出展:SAS対応マニュアル

・国交省が方針と合わせて企業のSAS対策のマニュアルを公表

企業に対してSASの解説ともいえるマニュアルを公表しました。この中にはSASの病態や、事故、診断方法、治療法やその効果、そして事業者・管理者が果たすべき役割が記載されています。2015年には、より具体的なSAS対策マニュアルが公表され、現在はそちらが活用されています。

【2010年】SASを含む健康起因事故防止のため、 健康管理マニュアルを公表

出展:事業用自動車の運転者の健康管理マニュアル

・SASに限らず健康管理全般をマニュアル化

健康状態により事故を起こす可能性が高まることから、SASに限らず健康管理全般をマニュアル化しています。全59Pとかなりボリュームがあり、国土交通省の力の入れ方がうかがえます。健康診断等の一般的なもの、点呼の手順といった実務に即した内容まで組み込まれています。


【2015年】SAS対策マニュアルの公表

出展:自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル~SAS対策の必要性と活用

・運輸業がSAS対策を行うための具体的なマニュアルを公開

いわゆる「SAS対策マニュアル」と呼ぶ場合、これを指すことが多くあります。SAS対策の必要性から乗務員の取り扱い、常務判断といった実務的な話に踏み込み、より具体的な記述を行っています。

「SAS対策は難しい」と捉えて、なかなか検査に踏み切ることができない、検査はしたもののフォローができていない、乗務可否判断が難しいなど、事業者が感じている対応面での懸念を踏まえて、SASスクリーニング検査の実施前(準備)から実施後(フォロー・活用)までの対応について、一連の流れを具体的”に示したもので、SAS担当になったら「まずこれを読む」という位置づけとなり、社内規定例も掲載されています。

一方、あくまで例示であるため、自社にどう適用するかは自社で検討する必要があることは留意が必要です。当法人では、規定を策定されている会社様へのヒアリングをもとに規定例を作成しております。以下のリンクからダウンロードいただけますのでご活用ください。

【2016年】スクリーニング検査実施状況の調査

出展:事業者における主要疾病等に関するスクリーニング検査の実施状況の調査結果概要

・運輸業の疾病検査実施状況の調査報告

各種啓発活動を進める中で、運輸業に対して検査等の実施状況の調査を行っています。バス・タクシー・トラック業に対してSASスクリーニング検査/脳ドック・脳mRI等/心疾患/人間ドックの4項目の実施状況が掲載されており、SASスクリーニング検査の実施率が顕著に高いことが示されています。

  • バス 72%
  • タクシー 16%
  • トラック 42%

【2016年】第192回国会 衆議院国土交通委員会 疾病運転への言及

出展:第192回国会 国土交通委員会 第7号(平成28年12月2日(金曜日)

・今後のSAS検査の実施状況次第で、新たな措置を講ずる可能性に言及

衆議院国土交通委員会のなかで、”事業者による自主的なスクリーニング検査の導入拡大に取り組む”とともに、”本法施行後三年を目途に、疾病運転の防止措置の実施状況を勘案し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる”と決議されました。今後何かしらの公表がある可能性があります。

各業界団体では、SASスクリーニング検査に助成金が用意されています

全日本トラック協会および各都道府県トラック協会、各都道府県バス協会など、業界団体ごとにSASスクリーニング検査には助成金が用意されています。内容は団体・都道府県ごとに異なりますので、一度所属協会の助成金案内をご確認ください。

当法人では都道府県別のトラック協会助成金一覧をご準備しております。以下のリンクからダウンロードいただけますのでご活用ください。

<同じシリーズのその他記事>

SAS担当になったら① ~SAS(睡眠時無呼吸症候群)についての解説~

SAS担当になったら② ~SAS(睡眠時無呼吸症候群)対策の3ステップ~

SAS担当になったら④ ~SAS対策においてのよくある課題~

SAS担当になったら⑤ ~SAS対策の費用と助成金~