SAS(睡眠時無呼吸症候群)は20世紀後半より長く研究されており、現在では症状だけでなく、生産性への影響や事故の危険性、他の疾患との合併など、非常に多くのことが明らかになっています。その一方で、SASはいびきが大きくなる病気、事故を起こしやすくなる病気と思われていることも多く、調べようとしても専門的なもの、論文記事などが多く、情報収集ができないこともあります。
そこで、この記事ではSAS対策について広く知っていただくことを目的とし、SASの情報をまとめました。およそ10分でざっくり分かる内容になっています。
尚、本記事中の””は
「職域における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の早期発見・早期治療の意義 三好規子 谷川武」を引用したものになります。
※一般的な情報提供を目的とした記事であり、個々人の症状に言及するものではありません。必ず専門医の指示に従ってください。
そもそもSAS(睡眠無呼吸症候群)とは?
Sleep(睡眠) Apnea(窒息) Syndrome(症候群)
つまり、 睡眠中に呼吸が弱まる・止まる病気 という意味です。
特に咽喉(のどのあたり)が塞がり呼吸が弱まるものを閉そく性SASといい、
”SASの大部分は、閉塞性(OSAS)”と言われています。
本ページでは、このOSASについて記述し、OSASのことをSASと記載します。
なぜSASになるの?
生まれ持った骨格、加齢に伴う筋力低下、肥満、扁桃腺肥大等を原因として
”上気道が閉塞し、胸・腹部の呼吸が弱くなる”ことでSASの症状が重くなります。
尚、SASは SASである/SASではない ではなく 重症/軽症と表現されます。SASの症状がみられる方は決して少なくなく、その重い/軽いの程度により対処の必要性が判断されています。
SASになるとどうなるの?
”睡眠の質を低下する要因”となります。
SASになると、睡眠時間を確保していても睡眠の質が著しく低下することになり、深刻な寝不足が連日続いてるような状態になります。
どうして運輸業にSASが推奨されているの?
寝不足のような状態が続くことにより、” SDB 患者が交通事故を起こ すリスクは,約 2.5 倍であるという報告がある ”ためです。また、日本のアンケート調査でも、”運転免許証の更新者 3,235 人を対象にしたアン ケート調査においても,SAS 患者の居眠り事故発生率は 3.1 倍であるとされている ”との記述があります。デスクワーカーであれば日中眠いことによるリスクは生産性の低下ですが、職業ドライバーでは眠ることが事故に直結するため、経営リスクのみならず社会的な影響が大きいため、国土交通省等が長年にわたり対処を推奨しています。
具体的に運転中にどういう状態になるの?
皆さんも昼間眠い経験はあると思いますが、昼間眠いということが、具体的にどう事故に結びつくのでしょうか。ここで、論文中の事故時の状況を列挙してみます。
- ” 交差点の直前 でその症状である前触れなく瞬時の睡眠に陥り,赤信号 に気付くのが遅れた可能性 ”
- ”弁護人は,被告人は SAS に罹患して おり,本件事故前に眠気を感じないまま,マイクロスリー プもしくは睡眠に陥ったことを主張 ”
とあり、突然意識を喪失している様子がうかがえます。さらには、
”これまで,居眠りの直前に眠気を感じるのは当然であるとされていたが,司法の立場においてもSAS患者において居眠り運転の直前に眠気がないことがあると認められた”
ともあり、眠気を感じないまま居眠りをする可能性があることが明らかになっています。そのため、SASの事故は重大事故につながる可能性が相対的に高く、事故を未然に防ぐために対処が求められています。
SASと健康の影響は?
まだメカニズムが解明されていないものもありますが、SASの患者は、高血圧・糖尿病・うつ病との相関が認められており、SASの治療は基本の健康状態の回復にも寄与していると考えられます。健康対策としてもSAS治療は有用だと考えられています。
SAS対策はどうすればいいの?
医療機関により違いはありますが、よくある流れは
- 自宅スクリーニング検査によりSASの可能性を判定する(診断ではない)
- SASの可能性の程度により、医療機関で精密PSG検査(1泊)を実施する。
- 精密PSG検査の結果により、SASの重症度が判明する
- 重症度により専門医が治療方針を決定する
このような流れで検査を実施し、必要な方には治療を実施します。
SASの治療は何をするの?
治療方もいくつかありますが、
- CPAP
- マウスピース
- 外科的手術
- 禁煙、減量等の保健指導
があり、これらを重症度、個人への適応性により専門医が判断します。
一般的には、重症の方への効果も高く、即効性のあるCPAPが処方されることが多く、特に運輸業においてはCPAPを第一選択肢としている専門医もいます。
どの治療法でも、月に1度程度、定期的に医療機関を受診し、しっかりと治療していくことが重要となります。
法人向けSAS対策はぜひご相談ください
いかがでしたでしょうか。SAS対策について広くご理解いただけていましたら幸いです。
当NPO法人では法人用のSASスクリーニング検査を提供しております。SASについてもっと知りたいという企業様からのご質問も受け付けておりますので、お気軽にお問合せください。