国土交通省:自動車運送業における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル(SAS対策マニュアル)の要約

運送業者が睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策を実施するためのマニュアルが国土交通省より公開されています。このマニュアルでは、SASの概要、対策の必要性、診断・治療方法、事業者向けの具体的対策がまとめられています。原文はこちら

■SAS(睡眠時無呼吸症候群)の概要

SASは、睡眠中に繰り返し無呼吸や低呼吸が起こる病気で、睡眠の質が低下し、昼間の眠気や集中力低下を引き起こします。運転者の疲労の原因がSASである場合があり、必ずしも眠気を感じることがないという点に注意が必要です。運転中に突然意識を失うような睡眠に陥ることもあり、運転者の状態が悪化すると、交通事故のリスクも高まります。重度のSAS患者は短期間に複数回の事故を引き起こすことが多いといわれています

■SAS対策の必要性

SASは健康だけでなく、交通事故リスクを高めてしまうため、運送業界では強くSAS対策が推奨されています。適切な対策によって、運転者の健康と事故のリスク低減が図れます。SASは適切に治療すれば、健康な人と同じように安全運転を続けていくことができます

■SASの診断・治療

SASの診断は、専門医による問診や睡眠検査が必要です。検査の方法としては、入院検査であるポリソムノグラフィー検査(PSG検査)があります。治療法としては、生活習慣の改善やCPAP(連続気道陽圧療法)などがあります。CPAPは、患者が寝る際に特殊なマスクを装着し、一定の空気圧を維持して、気道が閉塞するのを防ぐ方法です。CPAP治療は有効性・即効性があり、ほとんど副作用がありません。

■SASスクリーニング検査の重要性

運送業界でのSAS対策の起点となるのが、SASスクリーニング検査です。SASスクリーニング検査は、SASの早期発見を目的に、運転者を対象として、上記の確定診断のための精密検査が必要かどうかを判断するために行う簡易な検査です。運転者が適切なスクリーニング検査を受けることで、SASの早期発見・早期治療が可能となり、交通事故のリスクを低減することができます。

SASスクリーニング検査には機器を使用します。

SASスクリーニング検査に使用する機器の例

これらの機器を運転者に貸出し、自宅で機器を装着して就寝します。機器に蓄積された就寝時のデータを用いて、検査機関が判定を行います。その判定で「要精密検査」となった方が、精密検査を受ける必要がある方となります。

SASスクリーニング検査の基本は運転者全員を対象に実施することです。検査の頻度は3~5年に一度が目安で、職種変更や体重が急増したような場合にも検査を勧めます。CPAP治療等で治療していてコントロールが良好な人は対象外として構いません。

■事業者向け対策

運送事業者は、以下の対策を実施することが求められます。

  1. 運転者に定期的なSASスクリーニング検査を取り入れることで、SASの早期発見が可能となります。
  2. 運転者へのSASに関する研修や啓発活動を実施する: 運転者がSASの症状や治療方法について理解し、自己管理ができるようになることが重要です。
  3. 運転者の労働時間管理や休息時間確保を徹底する: 適切な労働時間管理や休息時間の確保は、運転者の疲労蓄積を防ぎ、SASの発症リスクを低減します。
  4. SASの治療中の運転者に対するサポート体制を整える: 治療中の運転者に対して、適切なサポートや配慮が必要です。例えば、労働時間の調整や休息時間の確保、治療状況のフォローアップなどが考えられます。

■まとめ

国土交通省が公開しているSAS対策マニュアルは、運送業者に対して、SAS対策の基本情報を提供しています。運送業者は、マニュアルに従って適切な対策を実施し、運転者の健康と交通事故のリスク低減を図ることが求められます。SASについて理解し、SASスクリーニング検査を含めたSAS対策を定期的に行うことで早期発見・早期治療が可能となります。また、運転者自身がSASに関する知識を身につけ、自己管理ができるようにすることも大切です。

運送業者は、運転者の労働環境や労働時間を適切に管理し、SASの発症リスクを低減する取り組みを継続して行うことが重要です。さらに、治療中の運転者に対するサポート体制も整えることで、運転者の健康状態を維持・改善し、安全な運送業界の実現に貢献できます。

国土交通省は、運送業者や運転者に対して、SAS対策や健康管理に関する情報提供や啓発活動を続けています。運送業者は、これらの情報を活用し、運転者の健康管理に取り組むことが求められるでしょう。運送業界全体でSAS対策を実践することで、運転者の健康と安全を守り、社会全体の安全確保に貢献していくことが期待されます。